肩関節周囲炎患者における肩関節の運動痛は様々な部位に誘発される
運動方向によっては大結節や肩峰、または腋窩部に痛みが誘発されるし
同じ運動方向であっても、痛みを訴える場所が人によってバラバラであるため、治療部位を決めるうえで術者を困惑させる
今回、水平屈曲運動の一方行のみの運動に焦点当てて、どこに痛みが出やすいのか、何が原因で痛みが誘発されるのかを調べてみた
【対象】
肩関節周囲炎と診断された患者14名15肩を対象
水平屈曲を他動運動のみを観察
【運動方法】
肩関節90°外転位を開始肢位
手掌を下に向けた姿勢で他動水平屈曲を行なう
【疼痛組織の探し方】
痛みによりそれ以上の運動が出来ない所で、最も疼痛を感じる部位を指先で一点、指し示してもらう
限局性の疼痛部位を指し示したら、検者はその部位を含めて、周囲5センチの範囲をくまなく、およそ3kgの圧力で骨に向かって垂直に指圧。この中で、最も痛みの強い場所を痛点として、一つの基準点とした
【疼痛組織の決め方】
痛点部に筋肉が2層、3層と重なって走行している場合は、それら全ての筋線維の起始および停止方向に向かって痛点から圧を加え、筋走行にそって過敏性の圧痛点を連続して聴取した筋肉を、運動痛の要因として記録
痛点の周囲に、痛点以外の過敏性の圧痛点が存在しない場合、直下の骨、関節、滑液包を運動痛の要因として記録
肩全体をくまなく加圧するも「どうしても限局性の痛点が分からない」「肩全体が痛い」と訴えた場合は、特定不能とした
肩関節周囲炎と診断されたものの、水平屈曲時に痛みを伴わない場合は、疼痛無しとした
上記の方法で調べた結果は、次の通りであった
烏口突起
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2名
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烏口突起~上腕二頭筋短頭腱
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1名
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上腕二頭筋長頭腱
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2名
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三角筋中・後部線維
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2名
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三角筋中部線維
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1名
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棘下筋(肩峰下部)
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1名
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肩甲上腕関節(後関節窩)
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1名
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特定不能(肩全体に痛み+、圧痛-)
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1名
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疼痛無し
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3名
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この結果をみると臨床家なら分かると思うが
肩前面痛の原因は、烏口突起インピンジメントによる痛みの可能性があるし
肩後面痛は、三角筋中・後部線維、棘下筋、関節包といった組織の伸張痛や癒着による痛みの可能性がある
つまり、肩関節周囲炎での運動時痛は、肩全体に無秩序に生じるのではなく、一般的に肩の機能解剖で説明のつく場所に生じている可能性が高いようだ
症状を持つ人は、どうしても「肩全体が痛い」「こっちが痛い」「あっちが痛い」というように訴える
そのため、術者は治療部位を特定するときに迷ってしまうのだが、その言葉に惑うことなく、基礎解剖を信じて治療を行えば良いのだろう

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